鹿児島県・屋久島の自然を舞台にした作品を多く手がけてきた鹿児島市の絵本作家、たにけいこさん(80)は、2011年の東日本大震災の直後、ある物語を書いた。ひっそりと机の引き出しにしまっていた物語を、最近になって出版する決意をした。子どもたちに伝えたい思いとは。
東日本大震災の時、たにさんは自宅で友人と電話をしていた。つけていたテレビを見ると、津波が家や人をのみ込んでいく映像が流れていた。一瞬、映画のワンシーンではないかと思ったが、現実だとわかり、血の気がひいた。人生で初めて、自然の恐ろしさを感じていた。
中でも心が痛んだのが、親が行方不明になったり、亡くしてしまったりした子どもたちの姿だった。
戦後を思い出していた。
父親の仕事の都合で、5歳のとき、福岡県から鹿児島に移り住んだ。周りには親が戦死し、孤児になった同級生がたくさんいた。終戦前後の混乱で親と離ればなれになり、中国に取り残された中国残留孤児がたくさんいたことも後に知った。
震災で突きつけられた 自然の恐ろしさ
震災で親を失った子どもたちと重なった。寄付はしていたものの、応援するために何かできないかという気持ちが募り、絵本を書き始めた。
たにさんは3人の子どもたち…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル